私は夫が調節性内斜視を持っておりレーシックで眼位の改善をしたことからこのサイトを立ち上げましたが、これまで調節性内斜視について調べてきたことをここにまとめておきます。
私はお医者さんでもなんでもありませんが、できる限り信頼できるデータ(政府発表のものや病院のサイトの内容)を集めてわかりやすく解説していきたいと思います。
調節性内斜視は幼児期に発症するケースが多く、早期の治療がとても重要になる病気です。
自分のお子さんが調節性内斜視になってしまって心配で仕方のない親御さんもいると思いますが、正しい知識と治療法を知ってほしいと思います。
また、大人になってからの調節性内斜視の対処法についても、実際に調節性内斜視であった夫(30歳)の経験をふまえてご紹介していきますので参考にしてください。
目次
調節性内斜視とは
片目が左右上下のどこかにに寄ってしまい、見ようと思っているものを両目で捉えること(両眼視機能といいます)ができないのが”斜視”です。斜視はまず内斜視と外斜視にわかれ、更にさまざまなタイプに分けられます。
内斜視の中で生後6か月以降に発症し、メガネをかけると眼位のズレが緩和されるものを”調節性内斜視”といいます。
さらに調節性内斜視は、
- 屈折性調節性内斜視…メガネをかけると内斜視がなくなる
- 非屈折性調節性内斜視…メガネをかけても近くを見るときには眼位がずれるため、プリズムメガネを使う
- 部分調節性内斜視…メガネをかけても眼位ズレが残る
の3つに分けられます。(参考:日本弱視斜視学会 斜視・弱視の病気の説明 ― 内斜視)
検査ではメガネをかけてみて眼位のズレがなくなったら調節性内斜視だと診断されますが、1,2歳でまだメガネをかけられない場合には縮瞳剤(しゅくどうざい)という眼圧を下げる薬を点眼して検査をします。
なお、生後6か月以内に発症する乳児内斜視は他の斜視に比べて危険な状態であるためすぐに病院へ行くべきです。手術が有効な治療法とされているので専門医に診てもらいましょう。
しかし、紛らわしいのですが赤ちゃんには”擬斜視”というものもあります。
これは、赤ちゃんはまだ鼻が低いために実際は斜視ではないのに斜視のように見えてしまう症状のことです。擬斜視の場合は成長とともに自然となくなっていくものです。
赤ちゃんの頃は頻繁に検診や病院へ行く機会も多く、お医者さんも斜視のチェックはしてくれているとは思いますが、少しでも早く気付くために日ごろから注意深く目をチェックしてあげているといいと思います。
遺伝による場合もあるので、家族に斜視の人がいる場合は特にお子さんの目をよく見てあげましょう。
調節性内斜視の特徴
上の図でいう”後天内斜視”のひとつである調節性内斜視ですが、だいたい1歳~3歳くらいの間に発症する病気です。
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.02ほどで生まれて1ヵ月ほどは光を感じ取ることしかできませんが、徐々に周りが見え始め、3歳の終わり頃には視力が1.0になります。(参考:視力の発達について‐浅野眼科クリニック)
生後6ヵ月~1歳頃までに見え方が少しずつ安定してきますが、何かを集中して見ようとするときに「あれ?片目が寄り目になってるかも?」と感じたら調節性内斜視の可能性を疑ってください。
以下で詳しく説明していきますが、調節性内斜視は手術をしなくてもトレーニングによって治ったり改善したりする病気です。
むしろ手術をするという選択肢はあまり良くなく、調節性内斜視であるのに手術を勧められたのであればセカンドオピニオンを求めるべきだと個人的には思います。
調節性内斜視のトレーニングの一番大きなものとしては”メガネをかけること”が挙げられます。
小さい子で分厚いメガネをかけている子を見かけたことがありませんか?
NHK番組の”お母さんといっしょ”を見ていても、1人か2人はメガネをかけた子を見かけます。
こういった子は調節性内斜視でメガネによるトレーニングをしている子の場合が多いので、割合的にもこのくらい(番組を見る限り20人に1人くらい?)の子供がなる病気なのだと思います。
決して治らない病気ではなく、とにかくトレーニングが大切な病気です。
しかし分厚いメガネをかけることで周りの子に珍しがられたり、本人がメガネを嫌がってつけてくれない場合もあるかもしれません。
ママやパパのサポートがとても大事になってきますので、お子さんに「一緒にがんばろうね」と声掛けをしながらトレーニングに励んでいってほしいと思います。
調節性内斜視の人が知っておくべき”遠視”について
これから調節性内斜視の原因や治療法などについて説明していこうと思いますが、ここからの話は”遠視”についての話になります。
なぜなら、調節性内斜視は遠視が原因でおこるものだからです。
そのため、遠視について知ることは調節性内斜視を知ることに直結していきます。
- 遠視の原因=調節性内斜視の原因
- 遠視の治療法=調節性内斜視の治療法
一般的に多い近視とは違い、遠視については聞きなれない方も多いと思います。
私も初めは遠視と聞いてもピンとこず、「近視の逆だから近くが見えないのかな?老眼と同じ感じかな?」と思いました。
そのあたりのことも分かりやすく解説していきたいと思います。
遠視とは
遠視とは水晶体や角膜、眼軸(眼球の直径)の短さが原因で網膜の後ろでピントが合ってしまう状態のことを言います。
近くにも遠くにもピントを合わせにくいため、常にピントを合わせようとして目が疲れやすくなります(眼精疲労)。遠視の場合は集中して見ると遠くまでよく見えるので、視力検査では1.2~1.5と視力がいいのにも関わらず、ピントを合わせやするためにメガネを作る場合があります。
子供の場合ピントを合わせようとする力が強いため、軽~中度の遠視であれば遠くもはっきり見ることができます。
しかし、重度の遠視でピントが合わせられない場合は視界がぼやけてしまい、それを放置しておくと弱視となっていくので早めのトレーニングが必要です。
通常、赤ちゃんはみんな遠視で生まれてきます。
眼軸という、角膜と網膜の距離が短い(眼球の直径でもあるので、眼球が小さいということ)ために遠視の見え方になってしまうのです。
しかし赤ちゃんは大人よりも水晶体に弾力性があったり、毛様体筋が強いのでピントを合わせて物を見ることができますが、中には「強すぎる遠視」の赤ちゃんがいます。
その場合、近くも遠くもぼやけて見えてしまうので、ものを見るときにはかなりの調節力が必要になってきます。
意識的にものを見ようとするときに両眼視することができずに内斜視になってしまうのです。
片方の目でばかり物を見るようになると、もう片方の目が弱視になっていってしまいます。
弱視というのは物を見る力がなくなった目のことで、小さいうちに弱視にならないようメガネやアイパッチで鍛えていかないと大人になっても弱視のままになってしまいます。
遠視の原因は遺伝的なもの
遠くがぼやけて見える”近視”は生活環境などによって、中高生頃から出てくる症状ですが、遠視とは近視とは違い~3歳で発症するもの、つまり生まれつきもった目の形であると言えます。
そのため、環境によって遠視になってしまうことはほとんどなく、遠視の原因としてが遺伝的な部分が大きいです。
治療法についてはどんなものがあるか
それでは、調節性内斜視の治し方や治療法にはどんなものがあるのでしょうか?
調節性内斜視以外の内斜視や、外斜視の場合だと手術によって目の周りの筋肉をたゆませたり引っ張ったりする手術をおこなう場合もあります。
そして手術をする以外の治療法もあります。
- 手術による方法
- 手術以外による方法
遠視が原因で起こる調節性内斜視の場合はこちらの「手術以外による方法」で治療していくことが多いです。
実際に小さいころから眼科に通っていた夫も、「手術をおこなうと外斜視になってしまうリスクがあるのでできない」と言われていたそうです。
斜視のタイプによっては手術をするほうがいい斜視もあるので、早期にどのタイプの斜視なのかを見分けておくかは必須になってきます。
調節性内斜視の治療法
遠視が原因である調節性内斜視では手術をおこなわずに治療していきます。
流れはこのようになります。
- アトロピンなどの点眼薬を使って目の検査
- 遠視用のメガネを作成してメガネトレーニング
- 弱視の可能性があれば訓練・トレーニング
ひとつひとつ説明していきます。
アトロピンなどの点眼薬を使って目の検査
遠視の検査ではアトロピンやサイプレジンなど、目の調節力をなくす薬を使って検査をしていきます。遠視の人は意識をすればピントを合わせて物を見ることができてしまうので、調節緊張を取った状態での検査をおこなうのです。
アトロピンには強力な調節麻痺作用があるため、斜視や弱視の場合によく使われる薬です。
瞳孔を開く作用(散瞳作用)があるため、点眼後も3週間以上は視界がまぶしくなります。
夫や私がレーシックえを受けた際、調節麻痺薬としてミドリンという薬を点眼されましたが、アトロピンはミドリンよりも強力な調節麻痺作用があります。子供の目の調節力は強力なためにアトロピンを使用するのだそうです。
遠視用のメガネ作成してメガネトレーニング
正確な視力がわかると遠視用メガネを作成し、メガネをつけての生活が始まります。
まだ2、3歳の子にメガネをかけさせるのは可哀想ですが、目の視力が固まってしまうまでの間に少しでも遠視を矯正し、立体感や遠近感をつかむためにメガネの装着は必要となってきます。
見え方によってプリズムレンズ入りのものや、二重焦点レンズのメガネを作ります。
小さい子どもの場合、顔に凹凸が少なくメガネがずれやすいため、顔にしっかりとフィットしたメガネを選ぶようにしましょう。
斜視や弱視の治療用として買うメガネは、申請をすると保険適用になります。
弱視であれば訓練・トレーニング
メガネトレーニングで数か月生活したあと、メガネだけでは内斜視が治らない場合があります。
片目だけで物を見てしまい、もう片方の目が使われないために内側によっていく場合は、使われていないほうの目は弱視になる可能性があるので弱視の治療もおこなっていきます。
弱視とはメガネをかけても視力が1.0以下のものをいい、ものを見る力のないことをいいます。
小さいうち(8歳くらいまでに)に訓練やトレーニングをすることにより、見る力を鍛えていく必要があります。
アイパッチ(目に貼るシール)を使って利き目を隠し、使っていない目で文字や絵を描いて見る力をつけていきます。
大人になってからも調節性内斜視が残っている場合
このように、基本的に調節性内斜視のトレーニングは小さいうちにおこなうものです。
これによって本来の眼位のズレが緩和されたり、成長によって近視化が進んで遠視がなくなったりします。
それでもまだ内斜視が残る場合、大人になってもメガネをかけ続けることになります。
夫もこのタイプで、普段はメガネかコンタクトを付けて外出をしていました。
メガネやコンタクトなどの矯正器具を使わなくても視力は1.5ありましたが、メガネをつけないと眼位のズレ(内斜視)が出てきてしまうのです。
夫の場合はコンタクトでも眼位ズレは緩和されていましたので、大人になってまでメガネをし続けるのは嫌だという人は遠視用のコンタクトを付けるといいでしょう。
結局夫はメガネもコンタクトも煩わしくなってしまい、レーシック手術を受けました。
今は急に近くを見る場合や、ぼーっとしているときに内斜視になっているときがたまにある程度です。
これも、私が夫が調節性内斜視だと知っているから気づく程度で、普通の人には気付かれないくらいだと思います。
お子さんや自分が調節性内斜視になってしまい、不安になっている方も多いと思いますが、小さいころにできる限りのケアをしておけば遠視は軽減されます。
そして、大人になってからはコンタクトやレーシックによって日常生活を何の不自由なく生活することもできます。
何度も言いますが、小さいころのケアやトレーニングがとても大事です。視力が固まってしまうまでに少しでも見え方が改善されるようベストを尽くしてあげてくださいね。